AWS ElementalなMedia Servicesの大阪リージョン対応状況を確認してみた [2023年11月版]
はじめに
清水です。いよいよ来週からAWS re:Inventがはじまりますね。個人的にこれまでのre:Invent期間中の新サービス発表で思い出深いもののひとつが、2017年のAWS Media Servicesの発表です。惜しくもKeynoteでの発表とはなりませんでしたが、以降の動画配信の構成を大きく変えるサービスの発表だったと個人的に思っています。
そんな2017年11月に発表されたAWS Media Services、東京リージョンで当時すべてとなる5つのサービスが利用可能となったのが2018年2月のことでした。
その後、6番目のAWS ElementalなMedia ServicesとなるAWS Elemental MediaConnectが2018年11月にリリースされます。MediaConnectについてはリリースと同時に東京リージョンでも利用可能となっていました。そのためAWS Media Servicesの東京リージョンでの対応状況は、リリース当初(2017年)からは少しだけ遅れたものの、以降はフル機能が利用できる状況である、という認識です。
ところで、日本国内では2つ目のAWSリージョンとなる大阪リージョンも2021年3月2日に正式リージョンとして利用可能となりました。
この大阪リージョンでのAWS Media Servicesの対応状況はいったいどうなっているのでしょうか。最近AWS What's Newを眺めていると、いくつかのAWS Elementalなサービスが大阪リージョンでも利用可能になったとうアップデートがありました。お恥ずかしながら筆者はAWS Media Servicesの大阪リージョンでの対応状況を正確に把握できていなかったため、本エントリで整理してまとめてみたいと思います。
本エントリで扱うAWS Media Servicesについて
本題に入る前に、本エントリで扱うAWS Media Servicesについて定義しておきます。AWS公式ページの「AWS Media Services」を参照すると、2023年11月現在、以下の3カテゴリ合計18個のサービスがAWS Media Servicesとしてまとめられています。
- Content Creation
- Amazon Nimble Studio
- AWS Thinkbox Deadline
- AWS Thinkbox Frost
- AWS Thinkbox Krakatoa
- AWS Thinkbox Stoke
- AWS Thinkbox XMesh
- Content Distribution
- AWS Elemental MediaConnect
- AWS Elemental MediaConvert
- AWS Elemental MediaLive
- AWS Elemental MediaPackage
- AWS Elemental MediaStore
- AWS Elemental MediaTailor
- Amazon Interactive Video Service
- Amazon Kinesis Video Streams
- AWS Elemental Appliances & Software
- AWS Elemental Live
- AWS Elemental Conductor Live
- AWS Elemental Statmux
- AWS Elemental Link
いつの間にやらたくさん増えていましたね!AWS Thinkboxの製品やAWS Elemental Appliances & Softwareの製品もAWS Media Servicesとしてまとめられているかたちです。
本エントリではこの中でもContent Distributionに属する、AWS Elementalなサービスを扱います。具体的には以下の6つのサービスです。(AWS Elemental Media Servicesと称されることもあるかと思います。)
- AWS Elemental MediaConnect
- AWS Elemental MediaConvert
- AWS Elemental MediaLive
- AWS Elemental MediaPackage
- AWS Elemental MediaStore
- AWS Elemental MediaTailor
なお「AWS Media Services」の表記についてですが、「Amazon Web Services」と同じように「AWS Media Services」とMediaとServicesの間にスペースが入り、Servicesが複数形が正確な表記である認識です。MediaLiveなどサービス名と混同してMediaとServicesの間のスペースを忘れることのないよう気をつけましょう。
2022年1月時点の大阪リージョンでのAWS Media Services対応状況を振り返る
本題に入る前にもう少し引っ張ります(笑)! 本エントリの調査の際、弊社のんピの以下のエントリを見つけました。
こちらで2022年1月時点の大阪リージョンでのAWS Media Servicesの対応状況を振り返っておきましょう。本エントリで扱う6つのAWS Media Servicesについては、いずれも2022年1月時点で「東京リージョンにあって、大阪リージョンにないサービス」であったことがわかります。
[2022/1/13現在] 東京リージョンと大阪リージョンのサービス差分一覧を作ってみた | DevelopersIO
AWS Media Servicesの大阪リージョンでの現在の対応状況を調べてみた
さて、いよいよ本題です。AWS Media Servicesの大阪リージョンでの現在の対応状況を確認してみましょう。
確認方法ととしては、まずは基本となる以下「AWS Services by Region」のページを確認します。AWS Region Tableとも称されるページですね。
そして以下「AWS Regions and AWS Services」のページも確認しました。こちらのページ、私は本エントリの調査ではじめて存在を知ったのですが、APIレベルで対応状況が確認できたり、JSONでデータをダウンロードできたりと便利なページです!AWS公式ブログ(Subscribe to AWS Daily Feature Updates via Amazon SNS | AWS News Blog、Amazon SNS で AWS Daily Feature Updates をサブスクライブ | Amazon Web Services ブログ)でも紹介されているので、公式扱いの情報として扱って良さそうですね。なお「AWS Regions and AWS Services」」のページでは「AWS Elemental」で検索してもサービス名はヒットせず、medialive
などAPIレベルでの名称で検索する必要がある点に注意しましょう。
さらに最近のリージョン追加のアップデートについてはAWS What's Newを確認、そして最終的にはAWSマネジメントコンソールなどでリソース操作などができるかを最終確認としました。
AWS Elemental MediaConnect
まずは「安全で信頼性の高いライブ動画伝送」サービスであるAWS Elemental MediaConnectです。AWS Region Tableより、MediaConnectは2023年11月時点で 大阪リージョンに対応 しています。
AWS Regions and AWS ServicesのページのJSONデータでも下記のように確認できますね。
% curl -s https://aws-new-features.s3.amazonaws.com/html/aws_services.json \ | jq .mediaconnect { "af-south-1": "mediaconnect", "ap-east-1": "mediaconnect", "ap-northeast-1": "mediaconnect", "ap-northeast-2": "mediaconnect", "ap-northeast-3": "mediaconnect", "ap-south-1": "mediaconnect", "ap-southeast-1": "mediaconnect", "ap-southeast-2": "mediaconnect", "ca-central-1": "mediaconnect", "eu-central-1": "mediaconnect", "eu-north-1": "mediaconnect", "eu-west-1": "mediaconnect", "eu-west-2": "mediaconnect", "eu-west-3": "mediaconnect", "sa-east-1": "mediaconnect", "us-east-1": "mediaconnect", "us-east-2": "mediaconnect", "us-west-1": "mediaconnect", "us-west-2": "mediaconnect" }
なおAWS What's Newの情報より、2023/06/30に大阪リージョン対応がされていたことが確認できます。
AWS Elemental MediaConvert
続いて「動画ファイルを処理して、配信やアーカイブのためのオンデマンドコンテンツを準備する」サービスであるAWS Elemental MediaConvertです。AWS Region Tableより、MediaConvertも2023年11月時点で 大阪リージョンに対応 しています。
AWS Regions and AWS ServicesのページのJSONデータでも下記のように確認できます。
% curl -s https://aws-new-features.s3.amazonaws.com/html/aws_services.json \ | jq .mediaconvert { "af-south-1": "mediaconvert", "ap-northeast-1": "mediaconvert", "ap-northeast-2": "mediaconvert", "ap-northeast-3": "mediaconvert", "ap-south-1": "mediaconvert", "ap-southeast-1": "mediaconvert", "ap-southeast-2": "mediaconvert", "ap-southeast-4": "mediaconvert", "ca-central-1": "mediaconvert", "eu-central-1": "mediaconvert", "eu-north-1": "mediaconvert", "eu-west-1": "mediaconvert", "eu-west-2": "mediaconvert", "eu-west-3": "mediaconvert", "sa-east-1": "mediaconvert", "us-east-1": "mediaconvert", "us-east-2": "mediaconvert", "us-west-1": "mediaconvert", "us-west-2": "mediaconvert" }
AWS What's Newより、MediaConvertは2023/08/21に大阪リージョンに対応したことが確認できます。
AWS Elemental MediaLive
「あらゆるデバイスへのブロードキャストおよびストリーミング向けにライブ動画をエンコードする」サービスであるAWS Elemental MediaLiveも、。AWS Region Tableより2023年11月時点で 大阪リージョンに対応 していることが確認できます。
AWS Regions and AWS ServicesのページのJSONデータでも、下記の通り対応済みであることが確認できますね。
% curl -s https://aws-new-features.s3.amazonaws.com/html/aws_services.json \ | jq .medialive { "ap-northeast-1": "medialive", "ap-northeast-2": "medialive", "ap-northeast-3": "medialive", "ap-south-1": "medialive", "ap-southeast-1": "medialive", "ap-southeast-2": "medialive", "ca-central-1": "medialive", "eu-central-1": "medialive", "eu-north-1": "medialive", "eu-west-1": "medialive", "eu-west-2": "medialive", "eu-west-3": "medialive", "sa-east-1": "medialive", "us-east-1": "medialive", "us-east-2": "medialive", "us-west-2": "medialive" }
AWS What's Newの情報より、MediaLiveは2023/07/25に大阪リージョン対応がされていたことが確認できます。
AWS Elemental MediaPackage
お次は「インターネット配信用のビデオの準備と保護」サービスであるAWS Elemental MediaPackageです。AWS Region Tableより、MediaPackageは2023年11月時点で 大阪リージョンに対応 していることが確認できます。
AWS Regions and AWS ServicesのページのJSONデータでも確認してみましょう。MediaPackageについてはAPIとして、リリース時からあるライブ配信向けのmediapackage
、VOD配信用のmediapackage-vod
、そして今年2023年5月にリリースしたMediaPackage v2用のmediapackagev2
の3種があります。
それぞれ確認すると以下のように、mediapackagev2
のみap-northeast-3
がありません。(なお、jq .mediapackage-vod
がエラーとなってしまったことから、jqコマンドのオプションの書式をこのMediaPackageの節から変更しています。)
% curl -s https://aws-new-features.s3.amazonaws.com/html/aws_services.json \ | jq '.["mediapackage"]' { "ap-northeast-1": "mediapackage", "ap-northeast-2": "mediapackage", "ap-northeast-3": "mediapackage", "ap-south-1": "mediapackage", "ap-southeast-1": "mediapackage", "ap-southeast-2": "mediapackage", "ca-central-1": "mediapackage", "eu-central-1": "mediapackage", "eu-north-1": "mediapackage", "eu-west-1": "mediapackage", "eu-west-2": "mediapackage", "eu-west-3": "mediapackage", "sa-east-1": "mediapackage", "us-east-1": "mediapackage", "us-east-2": "mediapackage", "us-west-1": "mediapackage", "us-west-2": "mediapackage" }
% curl -s https://aws-new-features.s3.amazonaws.com/html/aws_services.json \ | jq '.["mediapackage-vod"]' { "ap-northeast-1": "mediapackage-vod", "ap-northeast-2": "mediapackage-vod", "ap-northeast-3": "mediapackage-vod", "ap-south-1": "mediapackage-vod", "ap-southeast-1": "mediapackage-vod", "ap-southeast-2": "mediapackage-vod", "ca-central-1": "mediapackage-vod", "eu-central-1": "mediapackage-vod", "eu-north-1": "mediapackage-vod", "eu-west-1": "mediapackage-vod", "eu-west-2": "mediapackage-vod", "eu-west-3": "mediapackage-vod", "sa-east-1": "mediapackage-vod", "us-east-1": "mediapackage-vod", "us-east-2": "mediapackage-vod", "us-west-1": "mediapackage-vod", "us-west-2": "mediapackage-vod" }
% curl -s https://aws-new-features.s3.amazonaws.com/html/aws_services.json \ | jq '.["mediapackagev2"]' { "ap-northeast-1": "mediapackagev2", "ap-northeast-2": "mediapackagev2", "ap-south-1": "mediapackagev2", "ap-southeast-1": "mediapackagev2", "ap-southeast-2": "mediapackagev2", "eu-central-1": "mediapackagev2", "eu-north-1": "mediapackagev2", "eu-west-1": "mediapackagev2", "eu-west-2": "mediapackagev2", "eu-west-3": "mediapackagev2", "sa-east-1": "mediapackagev2", "us-east-1": "mediapackagev2", "us-east-2": "mediapackagev2", "us-west-1": "mediapackagev2", "us-west-2": "mediapackagev2" }
AWS What's Newを確認すると、MediaPackageの大阪リージョン対応はついこの間、2023/10/31であったことが確認できます。
上記AWS What's Newを確認する限り、MediaPackage v2のみ使用できない、といった制限事項はなさそうですよね。AWSマネジメントコンソールから、実際に大阪リージョンでMediaPackage v2が利用できるか確認してみました。以下のように、Channel Gropu、Channel、そしてOrigin Endpointのそれぞれのリソースが作成できました。実際にライブストリーミングを行ってみての確認はしていませんが、MediaPackage v2についても大阪リージョンで使用可能という認識となります。
AWS Elemental MediaStore
続いては「ライブストリーミングによるメディアワークフロー向けにビデオアセットを保存、配信する」サービスであるAWS Elemental MediaStoreです。AWS Region Tableより、MediaStoreは2023年11月時点で 大阪リージョンでは未対応 であることが確認できます。
AWS Regions and AWS ServicesのページのJSONデータでも確認してみます。MediaStoreのAPIはContainer操作系のmediastore
とObject操作系のmediastore-data
の2種類があります。
それぞれ確認してみましたが、以下のようにどちらも大阪リージョンでは対応していないことが確認できますね。
% curl -s https://aws-new-features.s3.amazonaws.com/html/aws_services.json \ | jq '.["mediastore"]' { "ap-northeast-1": "mediastore", "ap-northeast-2": "mediastore", "ap-southeast-2": "mediastore", "eu-central-1": "mediastore", "eu-north-1": "mediastore", "eu-west-1": "mediastore", "eu-west-2": "mediastore", "us-east-1": "mediastore", "us-west-2": "mediastore" }
% curl -s https://aws-new-features.s3.amazonaws.com/html/aws_services.json \ | jq '.["mediastore-data"]' { "ap-northeast-1": "mediastore-data", "ap-northeast-2": "mediastore-data", "ap-southeast-2": "mediastore-data", "eu-central-1": "mediastore-data", "eu-north-1": "mediastore-data", "eu-west-1": "mediastore-data", "eu-west-2": "mediastore-data", "us-east-1": "mediastore-data", "us-west-2": "mediastore-data" }
AWSマネジメントコンソールでも確認してみましょう。以下のように Region Unsupported が表示されてしまいました。
MediaStoreについては、Amazon S3が2020年12月に強い書き込み後の読み込み整合性をサポートしたことから、基本的にはS3でその機能をカバーできる認識です。またライブオリジンとしてはMediaPackageを利用することもできます。以下は東京リージョンでMediaStoreのAWSマネジメントコンソールを開いた状況ですが、S3もしくはMediaPackageをの使用を促される状況であることから、大阪リージョンでもS3もしくはMediaPackageの使用を検討すればよいかと考えます。
AWS Elemental MediaTailor
最後に「リニアチャネルアセンブリとパーソナライズされた広告挿入サービス」であるAWS Elemental MediaTailorです。AWS Region Tableより、MediaTailorはは2023年11月時点で 大阪リージョンに対応 しています。
AWS Regions and AWS ServicesのページのJSONデータでも下記のように確認できますね。
% curl -s https://aws-new-features.s3.amazonaws.com/html/aws_services.json \ | jq '.["mediatailor"]' { "af-south-1": "mediatailor", "ap-northeast-1": "mediatailor", "ap-northeast-2": "mediatailor", "ap-northeast-3": "mediatailor", "ap-south-1": "mediatailor", "ap-southeast-1": "mediatailor", "ap-southeast-2": "mediatailor", "ap-southeast-4": "mediatailor", "ca-central-1": "mediatailor", "eu-central-1": "mediatailor", "eu-north-1": "mediatailor", "eu-west-1": "mediatailor", "eu-west-3": "mediatailor", "sa-east-1": "mediatailor", "us-east-1": "mediatailor", "us-east-2": "mediatailor", "us-west-2": "mediatailor" }
AWS What's Newの情報より、MediaTailorは2023/10/30に大阪リージョン対応がされていたことが確認できます。
まとめ
6つのAWS ElementalなMedia Servicesの大阪リージョン対応状況について確認してみました。2023年11月時点でAWS Elemental MediaStoreを除く5つのサービス、具体的にはAWS Elemental MediaConnect、AWS Elemental MediaConvert、AWS Elemental MediaLive、AWS Elemental MediaPackage、AWS Elemental MediaTailorが大阪リージョンで利用可能です!
AWS Elemental MediaStoreについては現時点でその機能が、基本的にはAmazon S3もしくはAWS Elemental MediaPackageでカバーでき、S3もしくはMediaPackageの利用がAWSマネジメントコンソールでも案内されている状況です。つまり、実質的に大阪リージョンでもAWSを使った動画配信構成がフルスペックで実装できると言ってよいでしょう!日本国内第2のリージョンとしてバックアップ用として使用することもできますし、主に西日本向けに使用するのであれば大阪リージョンをメインリージョンとして選ぶということもできるかと思います。